当日配布のプログラムに載せた解説文を公開いたします。
有料録画配信YouTubeの説明欄に載せるつもりだったのですが、文字数が超過してしまいましたので、こちらに載せて、配信をお申し込みになった方に添付しています。配信お申し込みは当スタジオ宛てのEメールにて承ります。視聴しながら読んでいただくといっそう理解が深まるかと思います。
<楽器は歌う>
有料録画配信YouTubeの説明欄に載せるつもりだったのですが、文字数が超過してしまいましたので、こちらに載せて、配信をお申し込みになった方に添付しています。配信お申し込みは当スタジオ宛てのEメールにて承ります。視聴しながら読んでいただくといっそう理解が深まるかと思います。
<楽器は歌う>
本日は全てドイツ・オーストリアの作曲家たちによる音楽ですが、その中から19世紀ドイツにおける「歌う旋律」の系譜のようなものが見えてきます。フェリックス・メンデルスゾーン(1809〜1847)はロマン派初期にライプツィヒを本拠に活躍し、ゲヴァントハウス管弦楽団の音楽監督を務めたり、ライプツィヒ音楽院を創設しました。彼の門下生にカール・ライネッケ(1824〜1910)、さらにその門下にマックス・ブルッフ(1838〜1920)がいます。彼らの「旋律の際立つ美しさ」は圧倒的です。メンデルスゾーンの有名なヴァイオリン協奏曲のすすり泣くような主旋律はドイツ版演歌でしょう。彼はまた「無言歌」という器楽曲のジャンルを確立し、ピアノの音色だけで見事に歌を表現しました。ライネッケの音楽は技巧に走りすぎない優しげな旋律が印象的です。非常に多作で300曲以上を出版していますが、どちらかというと指導者としての実績が評価されています。そして、その晩年が前衛音楽の時代に突入していたので、まさにロマン派音楽の終着点となったブルッフは、「旋律は音楽の魂」と公言しています。彼もまたヴァイオリン協奏曲が知られていますが、その第2楽章は、世界中の最も美しい旋律の五指に入るほどの美しさです。本日はこれら3人の「歌う」作品を器楽演奏でたっぷりとお楽しみ下さい。
<歌曲の伴奏にご注目>
「歌う旋律」の前段階に目を移してみます。オーストリア・ザルツブルク出身のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜1791)の声楽作品は、どちらかというとオペラの方に人気がありますね。彼の次世代のフランツ・シューベルト(1797〜1828)は「歌曲の王」と呼ばれるほど多くのリートを作りました。この二人の特徴の違いは何でしょう。モーツァルトの時代は、音楽で情景や感情を表現する発想はまだそれほどなく、オペラであれだけやんちゃ娘やお下品な浮気男を登場させても、音楽は均整の取れた古典の枠内に収まっていて、歌曲も同様です。伴奏の音型に着目すると、声楽曲も器楽曲もあまり変わらないことに気づきます。ところがシューベルトは、なんて伴奏の表情が豊かなのでしょう。歌と伴奏が一体となって詩の世界を表しています。「鱒」では魚が素早く泳ぐ様を、「菩提樹」では葉のざわめきを見事に表現していますので、モーツァルトの「すみれ」との違いをぜひ聴き取っていただきたいと思います。シューベルトが、前段に登場したロマン派たちに続く道を開拓した言えるでしょう。彼の場合はまだ情景描写の範囲内ですが、時代が下るにつれて内面感情も音楽全身から溢れでてきます。
<歌曲の発展は詩もカギ>
19世紀になって歌曲が急速に発展した印象がありますが、言葉の意味がよく解らないイタリア語のオペラを宮廷劇場で鑑賞するのが貴族のたしなみの一つだった時代から、庶民階層が経済力や知識を身に付けて、自国語で書かれた文学や音楽に親しむようになっことが大きな理由のようです。モーツァルトの最晩年のオペラ「魔笛」はその扉の一つでした。ドイツ語で書かれ、ウィーンの城壁の外側に建つ市民劇場で上演され大成功を収めました。彼は次時代の到来を予測していたと言われています。もし彼がもう少し長生きしていたら、シューベルトを凌駕するような作品を書いていたかもしれませんね。
<歌と器楽の融合>
本日のメインテーマの一つが、器楽によるオブリガート(助奏)付き歌曲です。本日は、そのジャンルの作品を三曲演奏いたします。シューベルトの晩年に書かれた「岩上の牧人」はクラリネットの助奏付きです。二人の詩を交互に並べて三部構成に仕立てていることは面白い発想ですが、それよりも、クラリネットが存分に詩の世界を歌い上げて音楽の軸となり、ピアノ伴奏が、お見事と言うしかないほどシンプルな音型に徹している点が最大の特徴でしょう。
ジャコモ・マイアベーア(1791〜1864)による「羊飼いの歌」も同じ編成の作品で、岩の頂にいる牧人を歌っている点も共通しているので、この二曲はよくセットで括られるようです。本日はクラリネットに代わってヴィオラで演奏いたします。マイアベーアはドイツ出身のユダヤ人で、パリやベルリンで活躍したオペラ作曲家です。芸術文化の最先端都市パリで身に付けたハイセンスな音楽にプラスして、銀行家の息子だけあって興行の才覚も持ち合わせていましたが、ワグナー〜ナチスに至る反ユダヤ思想の標的となり、第二次大戦集結までたびたび上演禁止の憂き目に遭うという残念な歴史を歩むことになりました。
三曲めですが、プログラムを見渡してもそれらしき作品は見当たらないかもしれません。実は本日最後の曲目、「ドン・ジョヴァンニ」よりツェルリーナのアリア「ぶってよ! マゼット」がそれです。曲全体を通して、独奏チェロに文字通り延々とハーモニーを司る副旋律を与えています。本日はそれをヴィオラで演奏します。前ページで述べましたが、モーツァルトが考えたオブリガートの役割は情景描写ではなく、あくまでもハーモニー担当として分散和音や音階に限定している点に着目してお聴き下さい。
<器楽の醍醐味も味わって>
本日は、五名の出演者が色々な組み合わせで登場します。ソプラノの素敵なアリアへの橋渡し役として、巨匠ベートーヴェンがドン・ジョヴァンニの有名な二重唱の旋律をもとに作曲した変奏曲を器楽チームで演奏いたします。ヴィオラは相変わらず低音担当で、本来はファゴットのパートです。10種類の変奏曲が繰り広げられますが、さすがはベートーヴェン、実に生き生きとした器楽の妙技が展開されていき、終盤には第九交響曲ばりのフーガまで登場します。ちなみにこの旋律は、映画「アマデウス」ではプラハの劇場で聴衆が大合唱するシーンとして使われています。
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